(第6回)里帰りに時間と多額の費用を要する(飛行機代、国内移動費、お土産代)(→国際結婚・里帰り・ハーグ条約)
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日本国内でも土地によっては里帰り費は馬鹿になりませんが、ドイツから一時帰国となると、週末を利用して手土産持ってふらっと実家へなんてまず無理、ましてや家族を連れてとなると、その期間が1週間だろうが4週間だろうが、お財布にも体力的にもめまいがしそうな負荷がかかります。
そもそも外国に住む場合、家族親戚の人生の大切なイベント毎に、交通費 (飛行機そして国内移動費)が膨大額かかることをお忘れなく。
勿論、これらのイベントをすべて無視してお誕生日会など『お祝いしない宣言』してしまったり、または一時帰国時に一括して行うなど、不可能ではありません。けれども人間はつながりたい動物です。そして人間は実に現金なもので、会う頻度が減るほど親近感も薄れ、疎遠になり、両サイドに空いた溝を埋めにくくなります。海外に住んでいると、その溝が無償に冷たく心に沁みることがあります。疎遠が鬱の原因になることも。年を重ねるごとに、家族の誕生日やお祝い事、又はお別れは更に特別な付加価値を持ち、臨席できないことが罪悪感となったり。
若くて、経済力があって、家族が皆元気な時は、里帰りはただ単に楽しいの一言です。出発する前から、お土産をあれこれと考えて買い物に出かけ、それぞれの顔を思い浮かべながらパッキング。スーツケース1つがお土産で満杯なんてことも。日本の家族やふるさと、昔の同僚や友人ををドイツの家族に紹介したり、親に甘えたり、実家の特産品に舌鼓を打ったり、あっという間の滞在が心の充電をさせてくれます。子供が生まれてハーフの孫の顔を見せに里帰りするのは、皆からちやほやされてホクホクした気持ちになるでしょう。
でもそれは国際結婚が上手くいって、経済力のある場合の話し。もし結婚生活や仕事に辟易し悩んでいる時『ちょっと実家に帰らせてください』とありがちな感覚で一時帰国すればまた元気が出ると連想していると、大間違いです。
2020年初頭から世界的に蔓延して今でもその終息が未知なこのコロナ恐慌期、その打撃を受けたのは、国際結婚組にも多々います。今までは上記の様に定期的に一時帰国し心も体もリフレッシュ、が可能だったのが、この時期不可能です。更にシャットダウン期には24時間ドイツ語環境に陥り、普段それぞれが各所属部署(子供は幼稚園や学校、親は職場や自宅などそれぞれ別)で過ごすので顔を見合わせる事も夕ご飯の時だけ、といった生活が豹変しましたね。今更気づいた日々のずれ、ありませんか?今まで気にならなかった味覚や食事の好み、生活のリズム(起床就寝時間)そしてネットフリックスや映画を一緒に観れないなど。
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もし里帰りをする場合、お子さんのいる国際結婚組は、片親だけで子連れ一時帰国する際には要注意です。ハーグ条約をご存知でしょうか?片親の同意なしで、16才未満のお二人の子供を簡単に自分の故郷に連れていくことは条約違反になりかねません。(詳しくは外務省ハーグ条約についてを参照)
忘れないでください。皆だんだん年を取り、会わせたい孫たちも日本に無関心化、拒否感が生まれたり、他の外国へ旅行したい、年1の貴重な家族旅行がいつも日本とは限りません。
日本人の自分はどうしても一時帰国したいと思う場合には、家族旅行とは別に1人帰国など更なる経済的負担が生じます。親の遠距離介護のために、ドイツの仕事を調整して2・3カ月滞在したとしても、あの胸を引き裂かれるような苦しさや不甲斐なさ、未完結のままドイツへ帰国する別れの辛さ、例えようがありません。冷たいようですが親の死に目にあえない、のはもう常識だと思った方がよいでしょう。
また年金生活を始めると、金銭的そして健康上頻繁な一時帰国に自信が無くなってきます。そうです故郷はどんどん遠くなっていきます。
では国際結婚をした方はこの問題をどう乗り越えているのでしょうか?
まず日本の家族がお元気なうちは、その方に時々ドイツへ来てもらう。又は中間点で一緒に旅行するなどして、日本の家族との交流を失わない様にする。スカイプやラインなどを通して顔を見て連絡を取り合う。日本が恋しくなったらプチ日本をしにデユッセルドルフへ行き、和食の買い物や日本語環境にどっぷり浸かる(体験者談)。そして日本ドイツ両地に『自分の気持ちを分かってくれる人』を最初から作っておく努力を惜しまないように。幸せな結婚をスタートした時は、『このパートナーさえいてくれれば、私は幸せなドイツ生活がどこでもできる』『他に何もいらない』『この地でわざわざ日本人と友達にならなくてもいい』と夢物語を描く方も多くいます。
私達は結婚を通し日本からEntwurzeln(根抜き)し、この土地に移住し、新たな生活を始めているのです。このもぎ取られた根は、新たな地に植樹し水やりしなければ、枯渇していきます。ホームセンターで買ってきた青々とした植物が、上手く植樹されないと駄目になってしまうのと同じです。では、その土地に必要な栄養素は何でしょうか?
自分を信じ愛し、支えてくれる家族、があればいいのですが、それに何らかの支障が起きた時に心を開いて話の出来る人。家族ぐるみで夏にバーベキューしたり、旅行に行ったりする友達作りは簡単です。では、もし少し家族から距離を置きたいとか寂しい、お金に困っているという時に手を差し出してくれる友達はどうでしょうか?。自分が病気になった時に、『自宅の鍵渡すから私の寝室から下着持ってきて』と言える間柄の友人いますか?
経済的自立も必須です。里帰りは上記の通り、莫大な費用を要します。自分の好きな時に帰国できない、となると切なく脅迫感に見舞われ、ドイツでの生活自体に窮屈感や嫌気を感じます。その里帰りの理由が、両親や家族の介護や看取り、臨終となった場合、これほどもどかしいことはないでしょう。そもそもこれまでに営んできた職業を一旦辞めて渡独した方が多いはず。容易ではないですが(仕事出来る参照)是非就職と経済的自立の努力を惜しまないで欲しいです。それが自己の満足感と安心につながるからです。
自分らしく生きる環境をこの地で確立。ドイツに住む以上、ドイツ語は必須です。パートナーとのコミュニケーションが日本語で潤滑に出来ても、それ以外の場面でドイツ語から逃れることはできません。もし何らかの形でパートナーからの援助が得られなくなった場合、いつも通訳をつけるのですか?ドイツ人のお友達、要らないと思っていませんか?日本人のお友達と同様、ドイツ人のお友達も中に入れてください。
当地には様々な年齢に合わせた在留邦人用/日独交流コミュニテイーがあります。今まで忙しい、または嫌悪/遠巻きにしてた皆さん、一度覗いてみてはどうでしょう。沢山の先輩や同境遇の同世代に出会えたりと、沢山のメリットがあるでしょう。そして同境遇だから理解してくれる、ということも多々です。まずは1歩、歩み出してください。
執筆:フィッシャー平松さん(「竹の会」理事・日本とドイツの看護師、デュッセルドルフ)
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