お子様の予防接種
日本とドイツで定期接種の相違
● 2歳までに基本的な予防接種をほとんど終える仕組みになっています 。
● 基本の接種項目、接種時期、摂取回数が日本と若干異なっている場合があります。
● 基本的な予防接種には混合接種製剤が用いられることが少なくありません。
以下が例です
6種混合ワクチン(破傷風、ジフテリア、百日咳、ポリオ、ヒブ菌、B型肝炎)
3種混合ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪)
4種混合ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘)
● 日本脳炎、BCGはドイツでは基本予防接種の項目には入っていません。
● おたふく風邪だけの予防接種製剤はないため、MMR(麻疹、風疹、おたふく風邪の
3種混合ワクチン)が用いられます。
● 日本とドイツでは接種項目と接種時期が異なるため、日本の定期予防接種を全て終えていても、ドイツの小児科で不十分と指摘されることあります。日本で途中まで終えている場合、近く本帰国の予定の小児は掛かり付けの医師の助言をもらってください。
ドイツのSTIKO推奨の予防接種(2016)
ノイゲバウア馬場内科クリニックのウェブサイトより引用
ご旅行の前の予防接種
途上国への旅行に際して留意すべき予防法
ノイゲバウア馬場内科クリニックのウェブサイトより引用
ドイツでのインフルエンザ予防接種
日本とドイツとの相異のポイント
・2歳から17歳(18歳誕生日まで)は点鼻(経鼻型)ワクチンを使えます。
・ドイツで受けたインフルエンザ予防接種は日本でも有効です。
・ドイツでは妊婦は妊娠の可能性のある女性には積極的に予防接種が推奨されています。
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年齢別からみたインフルエンザ・ワクチンの選択(2017/2018)
点鼻(経鼻投与)ワクチンと注射ワクチンの違い
ノイゲバウア馬場内科クリニックのウェブサイトより引用
ダニ脳炎の予防のために
初夏脳脊髄炎(FSME)はマダニによって媒介されるウィルス感染症です。
● 流行地のキャンプ、森林内に入る予定がある場合には予防接種が効果的です。
● 感染が多く報告されているのは、南ドイツ各州やスイス、オーストリア、チェコ、ポーランドの森林地域です(ロベルト・コッホ研究所「2014年4月報告書」より)。
● マダニに噛まれないため、長袖、長ズボン、靴下を着用するようにしましょう。
● 事前に、ダニよけローション、スプレー、ダニ取りピンセットの準備をしましょう。
● 通り道からはずれての木陰での用便の際に注意しましょう
予防接種について
● 予防注射の回数
基本的には、@初回、A(初回から)1〜3カ月後、B(同)6〜9カ月後の3回接種です。その後、3〜5年ごとに免疫維持のためのワクチン接種を1回行います
● 大人用と小児用のワクチン
ダニ脳炎の予防接種には、大人用と小児用のワクチンの2種類があります。
● ワクチンの効果
予防接種を3回行うと、少なくとも3年間は99%以上の予防効果が得られます。
● ワクチン効果が得られるまでの期間
初回接種の7日後から抗体が上がり、予防効果が得られます。逆に言うと、接種翌日から予防効果が現れるわけではないので、旅行前に十分な日数的ゆとりが必要です。
流行地でマダニに噛まれてしまったら
● ツェッケ・ツァンゲ(専用ピンセット)
マダニは8本足を皮ふに食い込ませて血を吸うため、引っ張っても簡単には取り除けません。専用ピンセット(Zeckenzange)でねじるように引き抜きます。どうしても取れない場合には、最寄りの医療機関を受診してください。
より詳しくはドイツニュースダイジェストをご覧ください。
『予防接種手帳』
(文末に拡大写真あり)
予防接種手帳をご存知でしょうか。
ドイツで産れた人はもちろん、日本出生でもドイツで予防接種を受けたことがある方はみなさん所持されているはずの黄色い予防接種手帳です。実は、日本にはこのような全国で統一された予防接種手帳というものがありません。あるのは母子手帳に組み込まれている予防接種記録で、小児用のみとなります。一方のドイツの予防接種手帳は、生まれてから大人になるまで共通で、生涯を通して一冊にすべてが記録されるためとても便利です。
この予防接種手帳は、ドイツで出生した際に母子手帳とは別に一人一冊かならず配布されます。その後は予防接種を受けるたびに医師が薬剤のラベルをはがしてこの手帳に貼り、日付とともに記録をしていってくれます。つまりその人が生まれてから受けたすべての予防接種の歴史を一覧することができる手帳なのです。これにより、数年後に再度受けなければいけない予防接種がある場合なども個人で容易に管理できますし、過去に何をいつ接種したのかの一貫した記録があることは介護の必要となった高齢者にも有用であることは間違いありません。また、けがの治療などで急を要する場合でも、医師は治療の際に―たとえば破傷風の予防接種をするべきかどうかなど―即座に判断をすることができるのです。
このように予防接種手帳は実際的に非常に役に立つものです。ドイツや日本では医療分野においてはこの証明ができないと勉学や就業ができない規定があるほど重要なことですが、手帳があれば何ということはありません。
しかし大事なのは、医療従事者という一部の人のみでなく、多くの人にとっても同様のはずです。たとえば海外転勤の際に医療にかかるときにはドイツで常識となっているこの予防接種手帳の携帯は大変便利です。母子手帳に記録されるくらいの小さなお子さんはお持ちであっても、そのような子供たちも年とともにどんどん成長していきます。大人から子供まで、継続的に何の接種をいつ受けたか(受けていないか)の記載ができるこの予防接種手帳を一人一冊持つことにより、渡航時の心配が一つ軽減されることでしょう。ドイツのこの予防接種手帳は、掛かりつけのホームドクター、お近くのAllgemein Arztに頼めば発行してくれますし、また薬局でも手に入ります。
ちなみに日本国内とドイツの予防接種については本ページに詳しくあります。日本国内では接種記録は居住地の行政区で管理しているところが多く、行政区が変わると記録ベースが変わってしまうのが現状のようです。一冊にすべてを記すようにすれば引越しても安心です。まだお持ちでない方は、大人も子供もそれぞれ一冊ずつ、この機会にぜひ予防接種手帳を作っておいてください。
(2017年1月現在)
執筆:柏原 誠(シャリテ−・ベルリン医科大学国際課/千葉大学ドイツセンター・ベルリンオフィス)
予防接種に関係するドイツ語単語
予防接種手帳: Impfbuch、impfausweis、impfpass
予防接種: Impfung、Schutzimpfung
ワクチン: Imphstoff
生ワクチン: Lebendimpfstoffen
不活化ワクチン: Todimpfostoffen
抗体: Antikörper
風疹: Röteln
麻疹: Masern
水痘: Windpocken
おたふく風邪: Mumps
ジフテリア: Diphtherie
百日咳: Keuchhusten
ポリオ: Polio
インフルエンザ: Grippe、Influenza
点鼻の: nasal
筋肉注射の: intramuskär
狂犬病: Tollwut、Rabies
初夏脳炎: FSME (Frühsommer-Meningoenzephalitis)
破傷風: Tetanus
A型肝炎: Hepatitis A
B型肝炎: Hepatitis B
チフス: Typhus
黄熱病: Gebfieber