ドイツに暮らす在留邦人の健康支援ネットワーク(JAMSNETドイツ*)設立の趣意(抜粋)
* Japanese Medical Support Network
代表: 馬場恒春(内科)
代表代行:中川フェールベルグ美智子(産婦人科)
副代表:ホーネカンプ山本有(臨床心理士)、宮川順充(歯科)
アドバイザー:森由紀子(内科)、フィッシャー平松由紀子(看護師、竹の会「Bitte どうぞ」相談室)、シュペネマン望(DeJak-友の会代表)、柏原誠(現在、JAMSNET日本事務局、JAMSNETドイツ設立時メンバーの代表)、宮田裕子(心理療法士、ウルム大学附属病院)、土居真理(臨床心理士・公認心理師、デュッセルドルフ女性相談センター「Chance」相談室
事務局担当:中川フェールベルグ美智子、ホーネカムプ山本有、フィッシャー平松由紀子、馬場恒春(以上、敬称略)
1.目的:
邦人医療関係者間の情報交換・連携。ドイツ在留邦人の医療分野での支援。
2.背景:
邦人はドイツで日本在住時に比べて言語的問題が大きく医療アクセスが困難な状況にあり、苦労を強いられている。健康問題、特にメンタルヘルスの問題は言語的・文化的背景の理 解が必須であるため邦人にはより一層厳しい環境である。地域によっては邦人が多数在留し医 師・ 看護師・カウンセラー等医療専門職として活動している者もいるが、ドイツ全土に邦人が点在する在留状況を鑑みるならば、全土的邦人医療専門のコミュニティや支援ネットワークが不完全で あるといわざるを得ない。ドイツの医療制度および環境は他の国々と比しても充実しているが、外国人の中でも極少数派の日本人はその恩恵を十分に受けることは個人の力量に左右される要素 が大きく、十分なサービスを受けるためにも、邦人社会全体としての支援体制の確立や専門家による支援が必要である。
3.ネットワークの概要
参加メンバー: ドイツ在住の医療、保健、福祉、教育関係者および団体、およびドイツでの医療、保健、福祉、教育分野に深く関わっているドイツ国外の個人および団体。
活動内容: メーリングリスト、ウェブサイトを介して、ドイツ国内に在住あるいは滞在中の邦人に対し、相互扶助の精神に基づき、医療、保険、福祉、教育、生活などに関する情報提供や情報共有の場を築き、邦人の利益の増進に寄与する活動を行う。また、メンバー間の勉強会、一般邦人向けの医療関連の講演会なども行う。
他地域との連携: 他国の同様な団体と連携することにより、他地域の医療関係者との情報交換 を可能にし、照会・紹介先としても確保する。具体的にはジャムズネット・ワールド、世界各地域のジャムズネット(東京、ニューヨーク、カナダ、アジア)、メンタルヘルスネットワーク、医務官ネットワークなど。
災害・緊急事態の発生時: 大使館・総領事館と協力して邦人の被害状況の把握などの情 報収集、邦人に対する情報発信に有効である。またテロや自然災害発生時、邦人支援の ためのボランティアが必要になった状況でのリソースとしてもネットワークは有効に機 能することが期待される(テ ロ・大規模災害、流行感染症、自然災害の発生時など)。
平成28年6月28日(ベルリン)
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JAMSNETドイツからのご挨拶
ジャムズネット(JAMSNET)は「邦人医療支援ネットワーク(Japanese Medical Support Network)」の略です。ドイツ在住の医療、保健、福祉分野の専門家とドイツの事情に詳しいドイツ国外の会員が、ドイツで生活する在留邦人の心身の健康を支援するボランティア(非営利)のネットワークです。
ドイツは日本と同じように医療保険制度が発達し、診断や治療レベルも高い医療先進国です。それにも関わらず、言葉の問題、医療システムの違いなどから不自由を感じていらっしゃる方も少なくありません。お子様の定期予防接種の項目とスケジュールの違いから、どうすべきか戸惑われることもあります。出産に関しても、ドイツで出産するにはどうしたら良いのか、日本に戻った方が良いのかと迷われる方が多くいらっしゃいます。
海外に生活している中での身体の健康、こころの悩みへの対応、長期在留邦人の高齢化に伴う課題、空き巣・すり・テロ事件など生活面での安全、さらに家庭内暴力や性暴力など多くの問題に関わる情報を日本語で提供してまいります。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
JAMSNETドイツ代表 馬場恒春(デュッセルドルフ、医師)
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JAMSNETドイツの立上げを振り返って
飛行機移動が容易になり、インターネットで情報の垣根がなくなった現代。海外在住のハードルは低くなりました。しかし外国語を使用し生活する困難さは依然として大きく存在します。私のそこそこ長くなったドイツ生活、そこそこ使えるようになったドイツ語においても例外ではありません。
特に医療については、これまでも自身を含め、多くの人が言葉の壁により、適切または十分な情報を得られない(得られていないのではという)不安とともに生活を続けているのが実情です。いざ医者にかかろうと思っても、受診のタイミングや受診先、症状の理解や予後のことなどについて、ドイツ語だけの情報では、必要な情報を取り出し、判断することは大変難しいものです。
一方、時間をかけて調べてみると、ドイツ語での医療サポートや医療情報は思った以上に十分に充実していました。にもかかわらず、それをキャッチできていないために活用されていないといった問題が見えてきました。また日本人で医療に従事されている方も少なからずおられるのに(当然日本語で受診できます)、意外に知られていないこともわかってきました。
これまでの自身の経験や見聞に加え、医療システムや医療機関に関するアドヴァイスを求められる機会が次第に増えてきたことから、日本語による確かな医療情報を提供、交換する場所を持つことの必要性を感じるようになりました。
そんな折、ふとそのようなことをしている先達はいるのだろうかと探してみたところ、ニューヨークのJAMSNET の存在を知りました。その趣旨と目的に大変共感し、即コンタクトを取らせていただいたのが2012 年。それからニューヨークのJAMSNET を創設された仲本光一先生のご指導のもとJAMSNET の活動に参加し勉強させていただきながら、JAMSNET ドイツの設立に向けて動いてまいりました。
日本と同様に高齢化社会が医療・介護分野の大きな課題となっているドイツ。今後ますます健康と向き合う機会は増えていくことでしょう。日本語での医療情報を提供できるJAMSNET ドイツの誕生により、ドイツ在住のみなさまがますます安心して暮らすことが出来るようになることを願っております。
柏原誠(現在、JAMSNET日本事務局)